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獣の傭兵と美しい魔女『ゼロから始める魔法の書』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。

今回は、KADOKAWA/アスキー・メディアワークス「電撃マオウ」で連載中の漫画『ゼロから始める魔法の書』をレビューします。原作小説は第20回電撃小説大賞の《大賞》受賞作で、本稿執筆時点で電子版は8巻まで刊行中です。著者は虎走かけるさん、キャラクターデザインはしずまよしのりさん。コミカライズ担当はいわさきたかしさんで、5巻まで刊行中。半獣半人の傭兵が剣を振り、魔女が呪文を詠唱する、正統派のファンタジー作品。テレビアニメも放映中です。

■ TVアニメ『ゼロから始める魔法の書』公式サイト

ゼロから始める魔法の書

『ゼロから始める魔法の書』 1~5巻 いわさきたかし・虎走かける・しずまよしのり / KADOKAWA / アスキー・メディアワークス

「獣堕ち」の傭兵と、腹ペコ魔女の出会い

本作の主人公は、半獣半人の「俺」。名前は明かされていません。ホワイトタイガーのような猫科の猛獣と、人間をミックスしたような外見です。鋭い牙や爪、圧倒的な腕力、肉体的な強靱さなどを生かし、傭兵稼業をしています。「俺」のような存在はこの作品世界ではあまり珍しくなく、「獣堕ち」と呼ばれています。いちおう人間と共生しているものの、普通の人間からは忌み嫌われる存在です。

「獣堕ち」の首は、「魔術」の生け贄として重宝されています。そのためよく命を狙われる「俺」は、魔女が大嫌い。物語はそんな「俺」が、ゼロと名乗る美しい魔女と出会うシーンから始まります。何者かに追われ森の中を逃げる「俺」は、偶然出会ったゼロに不思議な力で助けられます。「我輩は魔女である」と名乗るゼロ。もちろん「俺」は、全力で逃げ出します。

ところが「俺」に追いついたゼロにまったく敵意はなく、ただ食事をねだるのみ。逃げる途中、ゼロの作っていたスープをひっくり返してしまった「俺」に、「同じものを作って返すのが誠意というものだろう!」と詰め寄るゼロ。負い目のある「俺」は、しぶしぶゼロに食事を分け与えます。どうやらゼロは、他の魔女とはちょっと違うようです。

盗まれた魔術書を取り戻す

ずっと穴ぐらで魔術の研究をしていた、と語るゼロ。世俗に疎く、この国で魔女が反乱を起こしていることも知りません。盗まれた本を取り戻すため外出し、帰ってこないどころか連絡もない同胞の「十三番」を探すため、ゼロは穴ぐらを出ました。ところが激しい魔女狩りが行われているこの国では、ゼロがただ歩いているだけで焼かれそうになってしまうのです。

そこでゼロは、傭兵の「俺」に護衛を依頼。即座に断る「俺」に、ゼロは「獣堕ち」が魔術によるものだと明かします。ゼロは護衛の報酬として、「俺」を人間の姿に戻すことを提示。魔女と対峙しているのに普通に会話が成立し、本能でも「この女が俺に危害を加えることはない」と感じる「俺」と、決して首を落としたりしないと誓うゼロ。

こうして、魔女を狩る傭兵として雇われるためこの国を訪れたはずの「俺」は、魔女の護衛として雇われることになったのです。なんと因果なことでしょう。なお、「俺」の名前が明かされていない理由は、名前を知ったら下僕にするぞとゼロが脅すから。それゆえゼロは「俺」を「傭兵」と呼ぶのです。

「魔術」と「魔法」の違い

さて、本作では「魔術」と「魔法」の違いを、以下のように説明しています。魔術師(男)や魔女は「魔術」を操るために、術者を守る魔法陣を描き、生け贄をささげ呪文を唱え、悪魔を召喚して交渉……という面倒なプロセスを経る必要があります。ところが森の中で「俺」を襲った魔女やゼロは、呪文の詠唱だけで簡単に超常現象を起こします。

実は、悪魔を召喚せずとも「魔術」が使えることに、長いあいだ誰も気づいていなかったのです。難しい術など知らなくても超常現象が起こせてしまうという、「魔術」の常識がひっくり返る大発見。これをゼロは、悪魔の契約法則、すなわち「魔法」と呼びます。そう、「魔法」を発見したのは、他ならぬゼロだったのです。

そしてその「魔法」の基礎理論や、悪魔の名前、呪文などを記したのが、盗まれた本【ゼロの書】。悪用されると世界が滅びる本だと語るゼロ。才能さえあれば「魔法」は5年程度で習得できてしまうとのこと。そしてすでにこの国では、「魔法」を使う魔女による反乱が起きています。反乱を起こした〈ゼロの魔術師団〉で、【ゼロの書】は聖典になっていたのです。

原作小説1巻をコミック5巻で描く

……という濃密な世界設定を、コミックでは非常に丁寧に描いています。なんと原作小説1巻を、コミック5巻で描写しているのです。もちろん冗長ではありません。原作小説では描かれていないシーンが、扉絵で補われていたりします。そして、かわいいキャラクターたちが、シリアスなストーリー展開を柔らかく包んでいます。

あちこちに張り巡らされた伏線は、後半で一気に回収されます。「そういうことだったのか!」となんども膝を打ち、どんでん返しになんどもやられました。ファンタジー世界が好きな人、「ケモノ」が好きな人、カッコイイ呪文詠唱が好きな人に、強くお勧めしたい作品です。

ゼロから始める魔法の書

『ゼロから始める魔法の書』を試し読みする

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