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獣耳美少女と行商人の仲睦まじき旅『狼と香辛料』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。

今回は、KADOKAWA/アスキー・メディアワークス「電撃マオウ」で連載中の漫画『狼と香辛料』をレビューします。原作は電撃文庫の小説で、16巻での完結後、短・中編集が3巻と、後日譚の新シリーズ『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』が2巻まで刊行中です。原作の著者は支倉凍砂さんで、イラストは文倉十さん。コミカライズ担当は小梅けいとさんで、本稿執筆時点で15巻まで刊行中。テレビアニメ化もされており、2008年から2009年にかけて2期放映されました。

狼と香辛料(1)

『狼と香辛料』 1~15巻 小梅けいと・支倉凍砂・文倉十 / KADOKAWA / アスキー・メディアワークス

剣や魔法が出てこないファンタジー

本作の舞台は「教会の権威が綻びはじめた時代」。中世ヨーロッパ風のファンタジー世界です。とはいえ、剣や魔法が出てくるわけではありませんし、オークやドラゴンといったモンスターも出てきません。唯一と言っていいファンタジー要素が、動物の化身。普段の見た目はほとんど人間と同じですが、獣耳と尻尾が生えています。本作のヒロイン・ホロは、狼の化身。美少女です。一人称がなぜか「わっち」と、廓言葉っぽい雅やかな喋り方をします。

主人公はクラフト・ロレンス。こちらはいたって普通の人間です。剣や魔法は使えません。12歳のときに親戚の行商人に弟子入りし、18歳で独立。行商人生活7年を経て、いまは25歳。相棒は馬だけ。行商人としてはそこそこの実力を持っていると自負していますが、移動してばかりの生活で知人しかできない現状を少し憂いており、「最近ため息が増えた」ことを自覚しています。

そんなロレンスがある日、立ち寄った村でホロと出会います。なぜか全裸で、ロレンスの荷馬車に潜り込んでいたのです。この出会いのシーンは非常に印象的で、それまで白黒だったページがここだけ急にフルカラーになります。獣耳尻尾の全裸美少女が月に向かって遠吠えする幻想的で妖艶な姿は、息を呑むほど美しい。

村の麦をよく実らせて欲しいという約束を守り「尻尾の毛の数ほど」この村にいたというホロ。見た目は少女ですが、超高齢者です。豊作の神として祀られてきたものの、最近は連作障害を避けるためたまに土地を休ませると、「気まぐれ」と詰られるようになったと涙をこぼします。生まれ故郷・ヨイツの森へ帰りたいとロレンスに訴えるホロ。一人旅に飽いてきていたロレンスは、ホロとの旅を承諾するのです。

通貨の切り下げや為替などの“経済”を描いた作品

こうして始まった二人の旅路は、行商人らしく“商売”や“経済”活動における事件に巻き込まれていきます。例えば、取引に現金を用いず、別の町での取引により、商会内部でのお金の動きで処理する為替。通貨の銀含有率を上げる/下げるという噂話を巡る攻防。信用買いでひと儲けしようと思ったら、騙されて破産寸前に……などなど。経済をテーマにしたファンタジーというのは珍しく、文字通りスパイス(香辛料)が効いた異色の作品になっています。

なお、支倉凍砂さんによると、本作のタイトルはフランスの中世経済史家ジャン・ファヴィエ『金と香辛料―中世における実業家の誕生』(内田日出海訳・春秋社)をもじっているそうです。なんでも、読んだ資料のほとんどが学術書や専門書ばかりだったとのこと(原作小説16巻あとがきより)。しっかりとしたバックボーンを感じられるところが、この作品の魅力の一つでもあります。

ただ、あまり難しいことを考えずとも、楽しめる作品でもあります。見た目は少女だけど老獪なホロと、鈍感で尻に敷かれっぱなしのロレンス。二人の仲睦まじくもじれったいやり取りには、周囲で見ている他の登場人物も、そして読者もやられてしまうこと請け合いです。なんと言っても、コロコロと変わるホロの表情が、なんとも魅力的であります。

狼と香辛料(1)

『狼と香辛料』を試し読みする

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