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純愛・愛憎…華やかで儚い花魁漫画おすすめ8選

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艶やかな着物に華やかな花魁道中、廓詞(くるわことば)や所作に秘められた濃厚なエロティシズム……。世間から閉ざされ、独特な文化を育んだ遊廓は、煌びやかな世界として描かれる一方、女郎たちの抑えがたい愛憎の世界でもありました。愛と性を売る女郎だからこそ、愛憎・嫉妬は濃厚になり、純愛は切なく映ります。

今回は、華やかにして儚い花魁の世界がわかる花魁漫画8作品をご紹介します。

豪華で妖艶な、情念うずまく吉原絵巻『さくらん』

さくらん

完結『さくらん』 全1巻 安野モヨコ / 講談社

幼い頃に身寄りをなくし、女衒によって江戸吉原の玉菊屋へ売られた少女・きよ葉。「花魁なんぞなりとうない」と反抗しては脱走を繰り返します。しかし、姉女郎に「お前のような田舎ごぼうには無理」と挑発されたきよ葉は激昂し、思わず花魁になる宣言をしてしまうのでした。

土屋アンナさん主演、蜷川実花監督で実写映画化された際には、強烈な色彩の世界観が好評を博しました。本作は、主人公のきよ葉が花魁へと成長していく過程を軸に、煌びやかでエロティックな廓の様子から、女郎同士の心の交流、はたまた足の引っ張り合いまで、見かけの美しさと身内の泥仕合の両方が描かれています。

男と女の駆け引きの世界において、女郎の恋は彼女たちの嫉妬と妬みに満ちたものでもあります。「惚れたら負け」とわかっていながら情に流され、客と恋に落ちてしまったきよ葉は、まんまと他の女郎に嵌められて、儚く恋が散ってしまいます。同じ立場だからこそ、他の女郎の幸せな様子が気に食わない、そう思ってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。

作者の安野モヨコ先生は『シュガシュガルーン』『働きマン』など、ヒット作を多数手がける実力派。夫君は「新世紀エヴァンゲリオン」や「シン・ゴジラ」の監督である庵野秀明氏で、安野先生の作品『監督不行届』には、2人の新婚生活が描かれています。

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長崎女郎の秘めた純愛を貫いた半生『蝶のみちゆき』

蝶のみちゆき

完結『蝶のみちゆき』 全1巻 高浜寛 / リイド社

江戸の吉原を舞台とした花魁漫画が多い中で、長崎の丸山遊廓を扱った珍しい作品です。実在の人物を参考にした登場人物や、当時の食べ物・教育事情の描写など、時代の息づかいを感じさせる本格派です。

几帳(きちょう)は太夫という最高位の女郎でありながら、どんな男でも客に取る風変わりな遊女。他の女郎が取りたがらない酒癖の悪い商人を客にしたり、出島に出入りして異人の医師となじみになったりしています。ある日、几帳の客が突然倒れ、几帳は糖尿病と即座に診断し応急処置を施します。女郎らしからぬ手際の良さや医学の知識を持つ几帳には、わけありの過去がありました。

この作品の魅力は、几帳のキャラクターです。捉えどころのない言動やまとっている雰囲気がミステリアスで、品がよく話術も巧みでありながら、お高くとまっていないところが男たちを虜にしています。しかし彼女には、愛する幼馴染の男性に身請けされ、彼とその息子と幸せな日々を送っていたものの、あることがきっかけで遊廓へ舞い戻ってきたという過去が。彼女のどこか愁いを帯びた表情に、その半生が滲んでいます。

愛する人のために身を売って尽くす一途さや、「一度沈めば出られない」苦界の現実、世間から蔑視される元女郎が遊廓にむしろ安らぎを見出す皮肉さなど、花魁ものならではの重い哀しみが胸に迫ってくる作品です。

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ふつうの女郎たちの悲恋を描く群像劇『花宵道中』

花宵道中

完結『花宵道中』 全6巻 斉木久美子・宮木あや子 / 小学館

時代は江戸時代後期、舞台は吉原の小さな遊女屋「山田屋」。生まれも育ちも吉原という生粋の女郎・朝霧は、染物職人の半次郎と出会い、たわいもない会話から惹かれあうようになります。遊女であることを隠していた朝霧ですが、ある晩、なじみ客の座敷で半次郎と会ってしまい……。

安達祐実さん主演で実写映画化もされた本作は、山田屋の遊女と、彼女たちを取り巻く人々を描いた群像劇です。それぞれが独立した短編に見えますが、登場人物たちの事情や思惑が交錯し、後に明かされる関係性やその結末には胸が苦しくなります。

山田屋の遊女たちは様々な理由で遊郭に入ってきます。天涯孤独の娘が生きるためだったり、親に売られたり、人さらいによって連れてこられたり……。悲しい境遇でありながらも、遊女同士助け合い励まし合いながら、強く健気に生きています。しかし一方で、ほのかに思いを寄せていた男性への恋心や幼馴染との約束など、叶わぬ恋に身を焦がしている一面も。愛する人の死がきっかけで、お歯黒どぶ(吉原を囲む堀)へ入水自殺をしてしまったり、思いをとげられず病死してしまったり、遊女たちの無念や遊廓の暗い一面も描かれています。

また、本作は小説が原作のため、吉原炎上後の遊郭の仮宅営業や当時の経済状況など、史実に基づいて描かれているところもポイント。小説の作者はドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」の原作『校閲ガール』を書いた宮木あや子先生です。

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男性から見た遊女たちの姿を描く『百人遊女』

百人遊女

完結『百人遊女』 全6巻 坂辺周一 / リイド社

吉原通いをきっかけに身を滅ぼした男、惚れた女の末路が気がかりで遊里を捜す男、なじんだ遊女との決別を選んだ男など、江戸を生きた男たちと遊女たちの人生模様を描く作品です。遊女視点の作品もありますが、ほとんどは遊郭に通う男の客目線で描かれているのが、花魁漫画には珍しいポイント。タイトルが表す通り、百人百色な遊女とのドラマを堪能できます。

江戸時代の男たちが、遊郭に何を求めて、遊女たちとどう過ごし、遊女たちをどう見ているのかが丁寧に描かれているところが、他の花魁漫画とは一線を画しています。見どころは、身につまされる、細やかな心理描写です。江戸時代が舞台でありながら、登場人物は仕事のつらさや家庭の問題、人付き合いなどで苦悩していて、現代の私たちにも通じる点が多々あります。そんな男たちが吉原というかりそめの極楽で、遊女たちに癒され安らぎを感じ、ひと時の愛を交し合う様子はどこかロマンティック。男たちは遊女の胸に抱かれて羽を休め、再び日常へと戻っていく……遊郭が男たちにとってどういう場所だったのかがわかる作品です。

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大正時代を生きた遊女たちの物語『明治姉妹と大正遊女 新装版 雪月花/大門パラダイス』

明治姉妹と大正遊女 新装版 雪月花/大門パラダイス

完結『明治姉妹と大正遊女 新装版 雪月花/大門パラダイス』 全1巻 松田奈緒子

『重版出来! 』の松田奈緒子先生が描く、明治・大正時代を生きた少女たちの物語です。本作収録の「大門パラダイス」が大正時代の遊廓の話です。

欧米のキリスト教的価値観が浸透し、自由や人権が声高に叫ばれるようになった大正時代、遊郭や遊女は蔑視されるようになっていました。一方で孝行の教えも残る中、吉原の遊郭・菊水楼に少女たちが売られてきます。妙(たえ)は士族出身で、見た目も教養も申し分なく、親の貧苦を助けるために身売りした娘。りんは箸の使い方も知らないガサツな田舎者で、天涯孤独になった後、面倒を見てくれていた人に売られてきました。誰もが、美しい妙の方が売れっ子になると思っていましたが、意外にもりんの人気が出て…。

母や妹のためと自己犠牲を生きがいにしてしまい、より悲惨な境遇へ墜ちていく妙と、自分を哀れむことを止めて人生を自ら切り開いていくりん。同じ時期に入ってきた妙とりんですが、考え方や生き方の違いから、大きく人生が分かれてしまいます。りんがこのような考え方をするようになったのは、ある男爵との出会いがきっかけでした。先輩女郎や自分の境遇を嘆いたりんに対して、男爵は次のような言葉をかけます。

「今ここでこうしているのはお前のセイじゃない でもこれからはお前次第の人生なんだ」

 

「仕事を蔑んでも自分を蔑んじゃいけないよ」

男爵の考え方はそれまでの時代にはなかった、物事を自分中心に考える自分本位の考え方。男爵に触発されて、りんは考え方を変え、自分の人生を前向きに生きることを決めたのでした。もし出会ったのがりんではなく、妙だったら……運命は変わっていたかもしれません。

年季があけても帰る場所がない、借金のために嫌な客でも我慢しなければならないなど、江戸から大正へ時代が移っても変わらぬ遊郭や遊女の実態も描かれています。

『明治姉妹と大正遊女 新装版 雪月花/大門パラダイス』を試し読みする

少女漫画で花魁を読みたいならコレ!『青楼オペラ』

青楼オペラ

『青楼オペラ』 1~6巻 桜小路かのこ / 小学館

『BLACK BIRD』の桜小路かのこ先生が描く、花魁+ミステリー+ロマンスな作品です。両親を殺された武家の娘・朱音は、犯人を捜すために自分から吉原へ身売りします。そして武家嫌いの豪商・近江屋惣右助(おうみやそうすけ)と知り合い、反発しつつも惹かれあうように。やがて、両親の死には黒幕がいるらしいことがわかってきます。そして朱音の身にも危険が…!?

姉女郎との絆の深さや新造同士の友情、ライバル女郎との衣装比べなど、花魁漫画のツボである華やかな絵や対決シーンがふんだんに盛りこまれている作品です。特徴は、ヒロインが恋人や使用人にしっかり守られていることと、イケメンの現代的なキャラ造形。和装萌えはするけど、いかにもなチョンマゲや、遊廓の「体を売る」描写は苦手かも……という方にオススメです。武家出身のヒロインと、富裕層ですが商人である惣右助の、身分差が障害となる恋の切なさや、イケメン2人が競いあって守ってくれるところなど、胸キュン要素もいっぱいです。

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花魁×ダークファンタジー『花街鬼』

花街鬼

『花街鬼』 1~2巻 桜田雛 / 小学館

売れっ子女郎・玉菊をねたみから殺害し、死刑を待つ身の遊女・八千代。彼女の願いは、玉菊になって人生をやり直すこと。目を開けると、時間がひと月前まで巻戻り、八千代は玉菊になっていて……!?

『太郎くんは歪んでる』の桜田雛先生が描く、ダークファンタジー的要素が魅力の花魁漫画です。吉原の一角にたたずむ不思議な楼主が女郎たちの願いを叶えるのですが、女郎となった運命を呪う気持ちや、恋しい男のなじみである同僚への恨み、自分より成功している者へのねたみなど、人間の心に潜む闇が美麗な絵柄で描かれています。

楼主の叶える願いは復讐でも救済でも一度だけ。救いのない現実に一瞬「救いのようなもの」を見せつける楼主は、ある人にとっては神に見え、ある人にとったは鬼に見えるかもしれません。ファンタジーやオカルトが好きな方におすすめです。

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江戸の花魁が現代にタイムスリップしたら!?『江戸モアゼル』

江戸モアゼル

『江戸モアゼル』 1~2巻 キリエ / 幻冬舎コミックス

江戸吉原の女郎・仙夏(せんか)が、ひょんなことから現代にタイムスリップ。コンビニでバイトしながらも、花魁らしさは忘れません。平成の世にも通用する(!?)花魁テクニックで、日本男児もメロメロに……!?新感覚の花魁コメディです。

本作は、女郎の仙夏と、彼女と共に飛ばされてきた新造の寿乃(ひさの)、廓で働く若者・平吉の3人が、現代日本で生活をする様子が、浮世絵タッチで描かれています。遊郭が存在しない世界で、仙夏が見つけた仕事はコンビニの店員。しかし、廓時代の癖が抜けず、例えばお弁当をあたためるか確認する時に、

「では…お客の旦那の心と体は……あっためるかい…?」

と、色っぽい表情で聞いたり、さりげなくボディタッチをしたりと、男をその気にさせてしまうのです。

現代に馴染もうと努力するものの、ついつい女郎の癖がでてしまう仙夏に対して、若さゆえの適応力を発揮した寿乃は、携帯を使いこなし、言葉づかいも現代人そのもの。平吉は無駄に助平心を発揮し、ことあるごとに職質されます。合コンに花見に、どこかズレた暮らしぶりながら、三者三様に楽しんでいる様子がコミカルで面白いですよ。

『江戸モアゼル』を試し読みする

最後に

男にとっては天国、女にとっては地獄―――遊郭には、女郎の数だけドラマがあります。生きるために廓に入った女たちの悲しい境遇と、儚く散っていく命、また辛い境遇でも強く生きようとする姿。人生の光と影の縮図のような遊郭漫画、ぜひお気に入りを見つけてみてくださいね。

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