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マンガ社会学入門【2】どう向き合うか?マンガで学ぶ「一億総介護時代」への覚悟

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今、65歳前後の“団塊の世代”が、10年後に75歳を迎えることから、医療・介護の現場では「2025年問題」が叫ばれてきた。介護される高齢者の人数が爆発的に増え、少子化が進む若い世代が高齢者を支えることが困難になる。

今年2015年は、3年に1度の介護報酬改定の年である。介護職員の待遇改善などが盛り込まれているものの、依然として介護現場の労働環境は厳しい。高齢化がピークを迎える2025年には、介護人材は30万人不足するとの試算もある。自分の家族が介護を必要とする可能性が高くなるのはもちろん、社会全体で「介護」「看取り」という問題に正面から取り組まなければならない時が来ているのだ。

誰にとっても他人事ではない介護問題。その現場に迫るきっかけとして、2つのマンガを紹介しよう。

介護を知る入り口にもなる“マンガの教科書”

介護、大丈夫!! スマイル!! 介護士物語

『介護、大丈夫!! スマイル!! 介護士物語』 赤羽みちえ / 秋田書店

自らが母の介護経験をもつ作者・赤羽みちえが、介護士の視点で様々な「介護事例」をマンガとエッセイで紹介している本作は、介護に携わる人々、さらにはその周囲にいる人々の生き方までも、繊細な視点で捉えている。

介護のサポートをするボランティアの本音。

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認知症で周囲を信じられなくなったお年寄りと、介護スタッフ。

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介護スタッフたちの職場環境。

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そして、介護の必要な家族と、恋愛との葛藤。

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この1冊を通じて、まだ介護に直面していない読者であっても、介護をとりまく真実の一部を知ることができる。きっとどこかに、自分を投影できる人物を発見できるだろう。

この作品が、介護士の成長物語としてだけではなく、介護現場を俯瞰しているからこそ、人々の生き方やドラマが、共感をもって訴えかけてくるのだ。

作者による介護コラムには、よりリアルな介護経験からのアドバイスも語られている。介護を知るきっかけとして、介護現場の教科書として、多くの人の参考になるであろう1冊だ。

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笑えない現実を笑い飛ばし、“やさしい強さ”を教えてくれる

介護小学生 1巻

『介護小学生』 金山カメ / 笠倉出版社

こちらは、小学生時代に祖父母の介護を経験した作者・金山カメによるエッセイマンガであり、介護コメディーである。もちろん、コメディータッチであるというだけで、扱っているシーンはリアルだ。逆に言えば、コメディータッチにしなければ、描けないような切実さがそこにはある。

時は、昭和が間もなく終わろうとする頃。今ほど社会全体の介護への意識が高くなかった日本。そこに、実子でありながら全く非協力的な父、献身的に、時にパワフルに家族を引っ張る母、全力で介護を手伝う小学生(作者)と妹が暮らしている。

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「母はこの1年で 人が変わりました」

祖母の認知症発症により、優雅な専業主婦から「介護の主戦力」となった母を見て、小学生だった作者は本心からそう思ったのだろう。

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さらに、祖父は寝たきり。祖母の徘徊・排泄には毎日のように手を焼く状況。かわいらしい絵柄に和みつつ、「自分ならどうなっているだろうか」という、不安とも恐怖ともつかない感情が、読みながら脳裏に浮かんでは消える。

しかし、読後感はどうだろう。そこに、悲壮感はない。

介護とともにやってくる、「家族がひとつになる」時間。

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厳しくも、2人の娘をまっすぐ育てる母。

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認知症になって実子(父)のことは忘れても、親身に世話をする義娘(母)のことを贔屓にしつづける祖母。

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介護小学生だった当時に対する、作者の絶対的な肯定が、清々しく読者の琴線をふるわせる。時に、怒りや後悔、ケンカや不和もある。はらわたが煮えくりかえるような瞬間も、一度や二度ではないはずだ。

それでも時が経てば、自分の中に確かに残る愛情を信じることができる。

作者の経験が、これから先、一億総介護時代を生きる私たちに、大きな勇気をくれる。

活字では表現しきれないリアルを、マンガだからこそ追体験できる

超高齢社会と一億総介護時代。日本が抱える、正直「シャレにならない」社会問題である。否応なく向き合わなければいけない現実に対して有効なのは、問題に立ち向かう覚悟を決めることではないだろうか。そのために必要なのは、介護の現場で起きている事例(ケース)の理解であり、介護に関わる人々の生の声を聴くことだ。

今回紹介した2作品は、介護を経験した作者による実感が伴っており、極めて実用性の高い「教科書」なのではないかと感じる。

つい目を背けたくなるような現実。それを浮き彫りにしようとする時、マンガはしばしば極めて有効なツールになるのだ。

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