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種族の壁を越える愛『小林さんちのメイドラゴン』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。

今回は、双葉社「月刊アクション」で連載中の漫画『小林さんちのメイドラゴン』をレビューします。著者はクール教信者さん。ドラゴン(♀)が小林さん(♀)の家でメイドとしてご奉仕するコメディ作品。本稿執筆時点でテレビアニメが放映中です。

■TVアニメ「小林さんちのメイドラゴン」公式サイト

『小林さんちのメイドラゴン』

『小林さんちのメイドラゴン』 1~5巻 クール教信者 / 双葉社

メイドのドラゴンだからメイドラゴン

ファンタジー系の作品では、最強クラスのモンスターであるドラゴン。その巨体は固いウロコで覆われ剣をも跳ね返し、空を自由に飛び回り炎を吐く。牙や爪の鋭い攻撃や、尻尾による強烈な一撃もある。高い知能を持ち、魔法を使うこともできる。そんな、想像しうる限りの「強さ」をてんこ盛りに詰め込み、畏怖の対象になっているのがドラゴンという存在です。

本作の舞台は、現代の日本。主人公の小林さんは、会社勤めのシステムエンジニアです。仕事を終え外へ出ると、なぜかそこにはドラゴンが。もう1人(?)の主人公、トールです。トールは小林さんを背中に乗せて家に帰ると、魔法でメイド姿の女の子に変身します。なんだその凄まじいギャップは。

ちょろいドラゴンだからちょろゴン

ひょんなことから小林さんに助けられたトール。小林さんが大のメイド好きだと知って、恩返しのため押しかけメイドになったのです。ところがトールに、人間の常識はありません。自分の尻尾を料理して食べさせようとしたり、汚れだけ溶かす唾液で服を洗濯したり、曇り空を炎のブレスで吹き飛ばしたり。

でもそのズレた行動のことごとくが、大好きな小林さんのためなのだから憎めません。小林さんの頼みごとなら素直に聞いちゃうので、ちょろゴン(ちょろい+ドラゴン)呼ばわりされることも。ドラゴンの姿で送迎するのをやめさせるときも、落ち込んだトールに「時々は乗ってあげるから」と、まるで猛獣使いです。

だけどやっぱり中身はドラゴン

ところが実は、小林さんに対する一途な思いが例外なだけ。トールは人間全般を「下等で愚か」だと見下しています。カワイイ外見ではあるものの、中身はやっぱりドラゴンなのです。人間の感情は、あまり理解していません。とはいえ、商店街のおっちゃんおばちゃんとは普通にコミュニケーションできちゃうあたり、順応性は高そうですが。

そう、この作品は基本的にはコメディなのですが、実は異種間のコミュニケーションギャップという少し重いテーマが根底にあります。人間同士ですら、わかり合うのは困難です。ましてや種族の壁は、さらに高い。それを乗り越えるのは、トールの小林さんに対する愛……だけではありません。

オトコマエすぎる小林さん(♀)

小林さんが、実にオトコマエなのです。女性ですが。それは、トールを追いかけてきた2人(?)めのドラゴン、カンナを家に置いてあげるシーンに象徴されます。力を失い帰れなくなったカンナに「行くところないならうちくる?」と誘う小林さん。「に…人間なんて信じてない!」と言い返すカンナ。不信バリバリです。

でも小林さんは、そんなカンナを「知らない世界で誰も信じられない…当たり前だと思う」と受け入れるのです。頭にポンと手を置いて「友達になろうなんて言わないよ 一緒にいよう それだけ」と。なんちゅーオトコマエなのだ! 女性ですが。トールが惚れるわけです。カンナも急に懐いていきます。

どうやら、恐れられるばかりで優しくされた経験が極めて少ない、というあたりに「ちょろゴン」たるゆえんがあるようです。そして小林さんも、トールやカンナが来る前は、あまり笑わない、ストイックな感じだった様子。アニメ版はわりと萌え要素・コメディ要素が強めの構成になっていますが、原作コミックにはハッとさせられるシーンが随所にあります。アニメから入った方にも、ぜひコミックを読んで彼女たちのバックグラウンドを知って欲しい。そんな作品です。

『小林さんちのメイドラゴン』

『小林さんちのメイドラゴン』を試し読みする

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