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水木しげるさん追悼・貸本まんが復刻版『墓場鬼太郎』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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<こちらは「鬼太郎茶屋」も立ち並ぶ、調布市の深大寺です>

こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。

今回は、2015年11月30日に93歳で亡くなられた、漫画界の巨匠・水木しげるさんの『墓場鬼太郎』をレビューします。あの『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズの原点であり、2008年にはフジテレビ“ノイタミナ”でアニメ化されています。

墓場鬼太郎(1) 貸本まんが復刻版

完結『墓場鬼太郎』 全6巻 水木しげる / KADOKAWA / 角川書店

戦後大流行した貸本漫画

『墓場鬼太郎』1巻に収録されている「幽霊一家」と「墓場の鬼太郎」の初出は、貸本出版社の兎月書房が発行した怪奇短編漫画集『妖奇伝』です。「貸本」とは、いまで言う「コミックレンタル」のこと。戦後、主に漫画を中心とした貸本業が大流行し、全国に貸本屋ができた時期がありました。その貸本屋向けに漫画を販売する専門出版社や、貸本漫画家という職業も生まれました。水木さんも、貸本漫画家としてデビューした方々のうちの一人です。

ちなみに『墓場鬼太郎』4巻収録の「霧の中のジョニー」では、ねずみ男が貸本屋で漫画を借りるシーンがあります。従来は1冊10円だったのが15円に値上げされたと聞き、ねずみ男は「じゃあ返すよ」と漫画を投げ返します。いまはコミックレンタルが1冊100円(税込)くらいですから、約10倍。物価の違いに時代を感じますね。

1959年に『週刊少年マガジン』『週刊少年サンデー』が相次いで創刊すると、貸本漫画は徐々に衰退していきます。水木さんは『週刊少年マガジン』で連載することになり、正義の味方・鬼太郎が悪い妖怪と戦う方向へ路線変更。タイトルもアニメ化を機に『ゲゲゲの鬼太郎』に変え、大ヒット作になっていきます。『墓場鬼太郎』は路線変更が入る前の話で、おどろおどろしい雰囲気の怪奇譚になっています。

2冊で打ち切られるところだった『墓場鬼太郎』

水木さん自身による解説(『墓場鬼太郎』1巻に収録)によると、兎月書房『妖奇伝』は売れなかったため2冊で打ち切り。鬼太郎はそのまま終わってしまうところだったそうです。ところが、いち読者が社長宛に送った手紙によって運命が急転、短編集『墓場鬼太郎』として発行が続けられることになります。ファンの声が作家を救うという、好例ですね。

ただ、原稿料を払わない社長に激怒した水木さんは、「地獄の片道切符」「下宿屋」「あう時はいつも死人」の3冊(いずれも『墓場鬼太郎』1巻に収録)で兎月書房を飛び出し、三洋社(のちに『月刊漫画ガロ』を創刊する青林堂)で「鬼太郎夜話」を書くことになります(『墓場鬼太郎』2巻3巻に収録)。その後も、三洋社の社長が病気で倒れ中断したり、和解した兎月書房で続きを描いたはいいけど倒産してしまったりと、苦労続きだったようです。それが後に大ヒットシリーズになるわけですから、世の中なにがどう転ぶかわかりませんね。

どっちが正しい?鬼太郎の閉じている目は右?左?

鬼太郎の両親は、幽霊族の最後の生き残りです。二人とも隣人に身の上話を語った後、すぐに死んでしまいます。死体が隣人に発見され、父親はドロドロに腐っていたためそのまま放置、身重だった母親だけ墓へ埋められます。やがて地面から這い出てくる赤ん坊の鬼太郎。左目は閉じたままです。

やがて腐った親父の左目がドロリと流れ出し、床へ落ちると言葉を発し歩き出します。目玉親父の誕生(?)シーンです。鬼太郎の閉じた目は左、目玉親父も左。『ゲゲゲの鬼太郎』も髪の毛で隠れているのは左目なので、この辺りの設定は一貫しているんだなーと感心しながら読み進めていました。

ところが「下宿屋」のエピソードの途中から、鬼太郎はいきなり右目を閉じた状態に変わります。読んでいて思わず「うおい!」と声が出ました。同じ話の中で左右入れ替わってしまったのです。その後、目玉親父が初めて鬼太郎の眼窩へ隠れるシーンも右目。兎月書房版の終わりまで、閉じているのは右目のままです。三洋社版で再び誕生シーンが描かれ、以降は左目を閉じた状態へ戻ります。

『ゲゲゲの鬼太郎』も、長年のシリーズ中で設定が矛盾している場合が結構あるそうです。なんだか、おおらかな水木さんの性格を表しているようで、ほっこりしてしまいました。「長生きしたかったら、細かいことは気にするな」という水木さんの笑い声が聞こえてきたような気が……?

墓場鬼太郎(1) 貸本まんが復刻版

『墓場鬼太郎』を試し読みする

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