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荒廃した世界を旅する2人の日常『少女終末旅行』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。今回は、新潮社「くらげバンチ」で連載中の漫画『少女終末旅行』をレビューします。著者はつくみずさんで、同人で初めて描いたオリジナル作品がそのままデビュー作となったそうです。本稿執筆時点で、単行本は5巻まで刊行中、テレビアニメも放映中。荒廃した終末世界を旅する2人の少女の日常を描いた作品です。

くらげバンチ『少女終末旅行』(新潮社)

TVアニメ「少女終末旅行」公式サイト

少女終末旅行 1巻

『少女終末旅行』 1~5巻 つくみず / 新潮社

わずかに残る物資を求め旅する少女たち

本作の主人公は2人の少女、チトとユーリ。ほとんど誰もいない荒廃した世界を、たった2人で旅しています。物資が流通している様子もなければ、売店もありません。それどころか他の人との出会いもまれで、動いている機械に遭遇することすら珍しいという超過疎状態。辺りに緑はまったくなく、建物や道もボロボロ。まさに「終わった世界」を、わずかに残った物資を求め2人は旅しているのです。

2人の装いは、飾り気のない無骨なコートとズボンにヘルメット。ユーリがいつも銃を担いでいることもあり、軍用っぽい気配があります。着陸した状態の、外装がところどころはぎ取られたような爆撃機の中で、弾薬とともにレーション(糧食)を発見するシーンもあります。この世界には、そういう保存性の高い食料しか残っていないのでしょう。どうやら戦争の結果、こういう世界になってしまったようです。

そんな終末世界を生きる2人に、あまり悲壮感はありません。ひさしぶりのお風呂に喜んだり、大量に発生した雪解け水で洗濯をしたり、流れてきた大きな魚を焼いて食べたりと、なにげない「日常」を淡々と過ごしているように見えます。チトにユーリが銃を向けるシーンはドキッとさせられますが、身を寄せ合い生きている2人。ときどき喧嘩をすることもあるけど、基本的には仲良しなのでしょう。

第3の主人公、ケッテンクラート

そんな2人の愛車は、ケッテンクラートというちょっと変わった乗り物です。バイクの前半分と、無限軌道の駆動部&荷台という構造。ちょっとした段差はおろか、階段すら上っていける踏破力があります。なお、運転はもっぱらチトの役割で、ユーリは荷台で他愛もないことをしゃべったり寝たりする役割(?)です。ほとんどの場面でチトとユーリといっしょに登場する、第3の主人公と言っていいようなポジションを占めています。

実はこのケッテンクラートは、実在していた乗り物です。1巻の巻末に、『ガールズ&パンツァー』などの作品で軍事考証などを担当している、鈴木貴昭さんによる解説が載っています。ドイツ語の履帯式オートバイという意味で、第二次世界大戦中にドイツの自動車メーカーNSUが開発した超小型ハーフトラック(半装軌車)。つまり、現実の世界では80年ほど前に生まれた乗り物なのです。

巻末の設定資料では「設計自体は相当古いが個体としては最近生産されたもの」とされており、「文明崩壊後の世界では古い文献を読み取って復元した技術をおもに利用している」とのこと。とはいえ、実在していた物が固有名詞付きで登場するのは、本稿執筆時点ではこのケッテンクラート(とせいぜい『河童』の本)くらい。この乗り物が、作中においてかなり特別な立ち位置にあることは間違いありません。

2人(+1台)の旅はどこまで続くのか

物語の比較的早い段階で、2人(+1台)が旅しているのは階層型の超巨大都市であることが明かされます。そびえ建つ塔、まぬけな外見の石像、だれもいない寺院、しゃべる機械、不思議な生物など、2人(+1台)はいろんな「すこしふしぎ」と出会います。その都度、ちょっとずつこの世界の謎が解き明かされていきます。

ひたすら上の階層をめざす2人(+1台)。なぜ上を目指すのか。最上層にはなにがあるのか。そして、無事に辿りつけるのか。そもそもなぜこの世界は滅びてしまったのか。なぜ2人は生き残っているのか。恐らく、すべての謎が解き明かされることはないと思いますが、ああでもないこうでもないといろんな想像を膨らませるのも、この物語の楽しみ方の1つではないでしょうか。

なお、「くらげバンチ」の連載は、本稿執筆時点の最新話付近で今後の展開が非常に気になるできごとが起きており、単行本で楽しむタイプの方は閲覧注意です。読んじゃった私は、毎週金曜日の更新を楽しみにすることとします。ああ、気になる。

少女終末旅行 1巻

『少女終末旅行』を試し読みする

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