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風俗がテーマの漫画9選【エロだけではないリアルが分かる】

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「風俗=エロ」という固定観念で、風俗を取り上げる漫画に対して軽い印象を持たれている方は少なくないかもしれません。しかし、実写映画化で話題になった『闇金ウシジマくん』『新宿スワン』などをはじめ、人間の果てなき欲望をテーマとする作品には、エロの要素を含みつつも人間ドラマとしての秀作が多いのです。また、近年話題となった『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』などで描かれているように、単に肉欲を満たすだけのものではない側面も伺えます。

法律的な解釈ではキャバクラや雀荘、パチンコ店、ゲームセンターなども「風俗営業店」となるのですが、本記事では一般的にイメージされる(性的サービスの)「風俗」にフォーカスし、風俗のリアルな実態を踏まえながら、ストーリーに読みごたえのある漫画9作品をご紹介します。それぞれ内容が濃く、視点がユニークなので、興味を持った作品から楽しんでみてください。

日本全国の風俗を淡々と巡る『匿名の彼女たち』

『匿名の彼女たち』

『匿名の彼女たち』 1~5巻 五十嵐健三 / 講談社

中堅商社の営業マン・山下貴大は、32歳独身で彼女無し。見た目は至って普通の主人公が、日本全国の風俗を淡々と巡る、風俗版「孤独のグルメ」ともいうべき作品です。

全国各地の色街について丁寧に紹介されているのが本作の特徴。例えば、第1話に登場する新潟市の昭和新道は、

大手デパートが立ち並ぶ古町の繁華街の裏路地……

新潟駅から歩くには遠いためタクシー代のサービスをする風俗店もある‥‥

など、具体的に説明されており、地域性が伝わってきます。また、貴大はキャバクラを「女に騙されに行く場所」と表現し、風俗を

支払った分の対価がここにはある

キャバクラよりよっぽど道徳的ではないか!!

と断言しています。傷つくことや煩わしさを避けて女性と距離を置きながらも、風俗嬢のドキッとする一言に気持ちが一瞬揺らいでしまう……。どこか寂しさや哀愁を感じさせる心理描写に、共感してしまう読者もいるはずです。また、貴大とのやり取りから、登場する風俗嬢たちがそれぞれ抱える事情も垣間見え、考えさせられるエピソードもあります。

本作には「日本全国色街マップ」もついているので、男性は出張のおともに(!)、女性は彼氏の行動チェックに(!?)役立つかもしれませんよ。

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エロ描写一切なし。他人事ではない風俗の世界を描く『フルーツ宅配便』

『フルーツ宅配便』

『フルーツ宅配便』 1~2巻 鈴木良雄 / 小学館

勤めていた会社が倒産し、故郷に帰ってきた青年・咲田。学生時代にラーメン屋で顔見知りとなった強面の男・ミスジと再会した彼は、デリヘルの店長をやらないかと誘われ、ミスジがオーナーを務めるデリヘル店「フルーツ宅配便」で働くことになります。女性たちはそれぞれの事情でお金が必要な人々。みな、フルーツの源氏名をつけられ、自分のため、家族のためにデリヘル嬢として働いているのでした。

この作品の最大の特徴は、デリヘル行為のシーンが一切描写されていないこと。ごくごく普通の女性が、ほんのちょっとしたきっかけで借金を抱えたり、お金が必要になったりして、普通に働くよりも給料の良い風俗に入るというのは、現実にもよくあることで、たびたび社会問題にもなっています。本作は徹底的にエロを排除し、ユーモアも交えながら彼女たちの悲哀を描いているところが秀逸です。

中でも特筆すべきはミスジのキャラ。オーナーである彼は、店の女の子には手厚く優しくしますが、それはあくまで「商品」だから。新人店長の咲田は女性に同情し、なんとか助けられないかと考えますが、

あんまりよ…あんまり店の子に感情移入すんな…おれらに人なんか救えない。

と言い切るミスジの言葉は一つの真理を突いており、優しさだけではどうにもならない現実を考えさせられるのです。

また、新規客を捕まえるために広告やサイト運営にコストをかける分、常連客をいかにつかむかが大事など、デリヘルのビジネスとしての戦略もうかがい知ることができ、なるほどと思う場面も。「自分とは全く関係ない」と思っていた風俗の世界が、実はすぐ隣り合わせにあるものだと実感し、同時に現代社会の生きづらさも感じる作品です。

『フルーツ宅配便』を試し読みする

デリヘルの美人ドライバーのトラブル解決が痛快!『デリバリー』

『デリバリー』

『デリバリー』 1~5巻 usi / 芳文社

主人公はデリヘルの美人ドライバー・桜坂。複数の店のドライバーをかけもつ彼女には、社員や店長としてのオファーがしばしば舞い込みますが、桜坂はフリーランスのスタンスを貫きます。客はもちろん、風俗嬢も多種多様。客の財布から金を盗んでも罪悪感のない女、本番行為がダメな本当の理由を知らない女、ギャンブル依存の女、客へのストーカー行為に走る女……桜坂は彼女たちの周りで起こるさまざまなトラブルを、言葉で、時には腕っぷしで解決します。

送迎中の車内は、風俗嬢にとってくつろげる数少ない場所です。日々、桜坂は風俗嬢の話を聞き、時には客と対峙し、店の裏側を見つめます。風俗業界で信念に従って物事を進める桜坂は、まさに「仕事人」。筋を通さない客や風俗嬢には、痛烈な一言を浴びせます。決して馴れ合わず、でも見捨てない。風俗店オーナーたちにも一目置かれ、風俗嬢には頼られる、そんな姉御肌な桜坂がカッコいい! また、彼女の視点を通して、性産業の実態も分かります。

読めばスカッと痛快な、凛々しく強い桜坂の活躍にシビれてください。

『デリバリー』を試し読みする

不思議な風俗嬢・ちひろの人生に心揺さぶられる『ちひろ』

『ちひろ』

完結『ちひろ』 全2巻 安田弘之 / 秋田書店

どんな男性客でも優しく受け入れ、女性の友人にポンと大金を貸して逃げられる……。博愛(?)の風俗嬢・ちひろを取り巻く人間模様を描いた物語です。

飄々としているけれどプロ意識もある、不思議な魅力を持っているちひろ。そんな彼女の内省が所々に記されています。

「博愛」「誠意」「優しさ」「真面目」「健気」「移り気」「無責任」「八方美人」「優柔不断」

本当の自分はどこにいるのかなんて考えるのはやめた

私の心はきっとどこにもいないから

ものすごいウソつきだから

風俗嬢は自身の魅力で男性客を惹きつけます。内心では客が離れてしまうことを恐れているために、過剰なサービスをしたり、疑似恋愛のような駆け引きをしたりして、愛を繋ぎとめようとするのです。しかし、ちひろは客を客として扱うため、深く執着はしません。そして、そんなスタンスの自分が一番貪欲なのだと自覚しています。なぜなら、繋ぎとめようと必死な風俗嬢に疲れたお客たちが、ちひろを指名するから。

どこか浮世離れしたちひろですが、しつこい客には毅然とした態度をとったり、一本筋の通った発言で悩める同僚を勇気づけたりもします。読むほどにちひろの過去や心の内をもっと知りたいと思ってしまうのは、それだけ彼女に魅力があるから。また、ちひろの周りにいる人たちは皆それぞれ人間臭く、人情溢れる人たち。風俗を描いた漫画ですが、コミカルな温かさも感じられる作品です。

現在は、続編の『ちひろさん』が連載中。風俗を辞めてお弁当屋で働き、相変わらず飄々としながら人を惹きつけるちひろと、彼女を取り巻く人々の人生模様が描かれています。

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男女の性事情をルポ形式で描いた『オトコとオンナの深い穴』

『オトコとオンナの深い穴』

完結『オトコとオンナの深い穴』 全1巻 大田垣晴子 / KADOKAWA / メディアファクトリー

大田垣晴子先生といえば、独特のユルさのある作画とエッセイに味わいのある作家さん。本作も、ともするとエグくなってしまいがちな男女の性事情が、ゆる~いテンポで描かれており、女性でも抵抗なく読み進めることができます。

取材を元に構成されたエピソードが全部で25話。人気ホストクラブ、元祖お見合いパブ、国際結婚相談所といったあたりから、ソープランド、デリバリーヘルス、老舗SMクラブ、SWAPパーティーといった刺激的なものまで多種多様です。それらにハマる男女それぞれの分析にはじまり、なかなか知り得ない現場の声まで丁寧に拾い上げています。大田垣先生ならではの鋭い人間観察が、各エピソードの奥底にあるディープな性の実情をあぶり出していて、読み応えたっぷりです。

著者が女性ということもあり、オンナ目線で知りたいことが詳しく取り上げているという印象を受けますが、男性読者が興味を持つツボもしっかりと押さえられています。25話のエピソードの後に語られる「男子禁制」の章では、女性特有のトピックをあけっぴろげにルポ。女性読者にとっては「あるある」という内容かもしれませんが、男性にとっては女性の秘密を覗き見るような、ちょっとイケナイ気持ちになってしまうかもしれません。

『オトコとオンナの深い穴』を試し読みする

映画化もされたストーリーをコミカライズ!ラストはグッとくる『風俗行ったら人生変わったwww』

『風俗行ったら人生変わったwww』

完結『風俗行ったら人生変わったwww』 全2巻 山口かつみ・@遼太郎 / 小学館

実写映画化された2ちゃんねるのスレッドを、『オーバーレブ!』の山口かつみ先生がコミカライズした本作。「年齢=彼女いない歴」のモテない主人公・遼太郎。勇気を出して飛び込んだデリバリーヘルスで出会った「かよさん」に、一途な思いを抱きます。かよさんはなぜ風俗嬢になったのか……。元カレの借金を肩代わりしたことがきっかけで風俗に放り込まれることになったかよさんですが、その話には更にウラがあったのです。

風俗業界の闇を巧みに描写しながら、遼太郎のラブストーリーが展開していきます。読み進めていくと、風俗業界に引きずり込まれ、自分一人ではどうしようもなくなってしまっている女性は決して特殊ではなく、他人事ではないということが分かります。

こんなもののために…いろんな人の人生の歯車がくるい、傷つけ合って…生きている意味を奪われてしまうなんて…

かよさんを思って涙ながらに発した遼太郎の言葉には、暗部を抱える社会への憤りや、なんともやるせない気持ちがこめられています。もちろん、「ラブストーリー」「成長ストーリー」としても読み応え充分。どんどんたくましい男に成長していく遼太郎を応援したくなります。また、彼を助ける頼もしい友人・晋作くんも策士で男前! 非常に魅力的です。

原作の空気感をうまく残しつつ、テンポが良くて読みやすいので、元スレやまとめサイトで知ったという方はもちろん、映画で観たという方にもおすすめです。

『風俗行ったら人生変わったwww』を試し読みする

誇り高き水商売を目指す高校生たちの成長物語『都立水商!』

『都立水商!』

完結『都立水商!』 全22巻 猪熊しのぶ・室積光 / 小学館

テレビやネットで「貧困女子」というワードを目にすることも多い昨今ですが、水商売で働くことになったきっかけは、あまりポジティブな理由ではないというのが実情ではないでしょうか? そんな水商売の在り方を変える、という気概で設立されたのが、本作の舞台「都立水商業高等学校」。そこには「フーゾク科」、「ゲイバー科」、「ホステス科」など、あらゆる水商売のスペシャリスト育成のための学科が存在します。しかし一方で、その校門をくぐることになった生徒たちは、高校生ながら社会から「失格」の烙印を押された落ちこぼればかりで……。

もちろん架空の高校なので、授業の内容はぶっ飛んだものばかり。“フーゾク科”の授業の基本は、コケシを使った「手こすり千回」。また、イメクラをテーマにした実習では、実際の電車内を模した教室で、演技力を磨くために「本気」で攻めたり、など、ここまでやるの!? という授業が繰り広げられます。また、教師と生徒のラブ要素もあり、笑いもドキドキも盛りだくさんです。

元はやさぐれていた生徒たちですが、第一期生を迎える入学式の祝辞で、校長はこう言います。

キミたちは脱落者なんかじゃない。

この国の「水商売」という未開の地に プライドとモラルの種をまき、育てる…開拓者なのです。

この言葉をきっかけに変わった彼らは、ポジティブに水商売を学んでいくようになりますが、世間的にはあまり受け入れられづらい分野なだけに、しばしばトラブルが。しかもその相手は、時に水商売を生業としている大人であることも……。教師と生徒が一丸となって立ち向かっていく様は、熱い学園ドラマとしても楽しめます。

水商売で働くということとは? 職業に貴賤はあるのか? 室積光先生・猪熊しのぶ先生の強いメッセージが詰まった本作。また、続編の『都立水商!2』では、一期生・小田真理が教師として水商に着任するところから物語が始まります。読後は、風俗業全般に対する見方が変わるかもしれませんよ。

『都立水商!』を試し読みする

破天荒なソープ嬢が江戸時代にタイムスリップして大活躍!『吉原のMIRAIさん』

『吉原のMIRAIさん』

完結『吉原のMIRAIさん』 全2巻 真倉翔・真里まさとし / 集英社

現代の吉原でNo.1だったソープ嬢・未来が、ひょんなことから江戸時代の遊郭・吉原にタイムスリップ。動揺するかと思いきや、持ち前のポジティブさですんなり順応し、彼女ならではの癒やしテクニックで一気にトップへ駆け上がっていく、風俗版『JIN―仁―』とも言える(?)作品です。

江戸時代の人々からしてみれば酔狂な格好と髪色で、「南蛮狸」などと呼ばれる未来。ですが、未来はトップを張っていたソープ嬢としてのプライドとプロ根性で、ライバルの売れっ子女郎・舞雪の執拗な嫌がらせにもめげません。勝ち気な未来が舞雪をやり込める様は痛快の一言! 一方、単に客の性欲を満たすだけではないという、風俗の「心」の部分にフォーカスし、未来が客を癒やす過程が描かれているところが見どころです。

江戸時代にはなかったくぐり椅子を自作し、米がゆの汁を「ろうしょん」代わりに、客を極楽へと導く……現代のアダルトアイテムをうまく江戸時代に再現するところは、タイムスリップものならではの面白み。一方、花魁ものでよく見聞きする「花魁道中」とはどういう時に行われるのか、吉原の妓楼(ぎろう)のランクはどうなっているのかなど、江戸時代の風俗も描かれています。

原作者は『地獄先生ぬ~べ~』の原作も手がけた真倉翔先生。明るくポップなエンタメ系風俗漫画として、ライトに楽しめます。また、『時をかけるMIRAIさん~吉原のMIRAIさん「特別編」~』では、平安時代や戦国時代にもタイムスリップ! 歴史上の人物まで癒やしちゃう未来に注目です。

『吉原のMIRAIさん』を試し読みする

風俗は世知辛いだけじゃない。はかない愛情や優しさを描く『デリワゴン』

『デリワゴン』

完結『デリワゴン』 全1巻 阿部定治・伊野ナユタ / 双葉社

本作は、デリヘル嬢の送迎を担当する主人公のユキ(男性)と、送迎されるデリヘル嬢のコミュニケーションを中心に描かれています。

強面でガタイのいい外見とはうらはらに、素朴で正義感の強いユキが巻き込まれる出来事を通じて描かれているのは、世知辛い風俗の実態。ですが、全編を通して、ユキだけではなく、デリヘル嬢やデリヘルの店長の一見分かりづらい愛情や優しさが描かれており、人間ドラマとしても秀逸です。

ユキの出自や、店長との出会いのエピソードからは、「職業や肩書だけで、人間を判断すべきではない」という思いで胸が熱くなります。ごついユキの不器用な笑顔に、デリヘル嬢だけではなく読者も元気づけられる本作。1巻のみと短い作品ですが、風俗業における人情の機微に触れており、続きが読みたくなる隠れた名作としておすすめです。

『デリワゴン』を試し読みする

最後に

人間への洞察が深い、秀作ぞろいの風俗漫画。エロくて楽しい描写もあるものの、人間の欲望との向き合い方や、男女の性、いにしえからビジネスとして長らく続く風俗業界で働くということなど、どの作品も独自の切り口から社会的な視点や強いメッセージを伝えていて、風俗を考えるきっかけを与えてくれます。

風俗の実際について知りたいけれど、どこを取っ掛かりにすれば分からない、という方も少なくないはず。風俗を描いたこれらの漫画が、その入口になるかもしれません。

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