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出版業界の最前線を鋭く描く『でんしょのはなし』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。

今回は、鈴木みそさんの『でんしょのはなし』を紹介します。電子雑誌『Web Magazine KATANA』に連載されていたルポマンガで、鈴木みそさんが電子書籍の業界関係者を取材し、その最先端の状況を描いたノンフィクション作品の単行本です。変わりつつある「出版」の今が、生々しくも鋭く描かれています。

でんしょのはなし

完結『でんしょのはなし』 全1巻 鈴木みそ / eBookJapan Plus

作家が自分で直接出版する時代の始まり

2012年10月25日、日本でKindleストアが始まるのと同時に、Kindleダイレクト・パブリッシング(通称KDP)が始まりました。誰でも出版できるセルフパブリッシングのサービスを、Amazonのような大手ネット書店が提供し始めたことには大きなインパクトがありました。

鈴木みそさんは、2013年1月にKDPを開始。出版社から出していたマンガの電子版を、自分で出すというチャレンジをしたのです。そのプロセスやノウハウをブログで公開して大きな話題になり、出版社を経ずとも数百万円稼ぐことができるという成功事例が生まれました。

伝説の「第1回電子マンガサミット」

『でんしょのはなし』の冒頭に収録されているのは、鈴木みそさんがKDPで成功した直後の2013年3月に阿佐ヶ谷ロフトAで行われた「電子マンガサミット」のレポートマンガです。登壇者は、『魔法先生ネギま!』の赤松健さん、『大東京トイボックス』のうめ(小沢高広)さん、eBookJapanの会長 鈴木雄介さん、そして鈴木みそさんの4人。

実は筆者、このイベントをライブで観ています。鈴木みそさんの成功事例を目の当たりにしても、まだ電子書籍の未来に懐疑的な赤松健さん。クラウドファンディングなど、少し違ったアプローチで新しい出版の形に挑戦しているうめさん。お酒を飲んで上機嫌のまま、本音トークをぶちまける鈴木雄介さん。とても刺激的なイベントでした。

「売れるマンガを描きゃいいの」

『でんしょのはなし』では、その模様がリアルに、そしてコミカルにマンガ化されています。鈴木雄介さんの名(迷?)台詞「売れるマンガを描きゃいいの」や、それに対するマンガ家先生3人のリアクションなどが、見事に再現。会場がヤバイ雰囲気で静まりかえった次の瞬間、うめさんが「会長にもういっぱい久保田を!」と言って場を和ませるシーンは本当に面白かったです。

他の取材対象は、「Dモーニング」アプリがリリースされた直後の講談社、Amazon Kindleコンテンツ事業部長、クリエイターエージェント会社コルクの佐渡島庸平さん、「エロ」に強いDMM.comの社長、ピースオブケイクの加藤貞顕さん、「マンガボックス」編集長の樹林伸さん。どの話も非常に興味深く、未来を憂う出版関係者なら必読です。

見逃せない『ナナのリテラシー』との関連性

鈴木みそさんは元々、『ファミコン通信』(後の『ファミ通』)でルポマンガを連載していたこともあり、取材へ行って、インタビューで鋭く切り込み、それをマンガでレポートする手腕には定評があります。そして『でんしょのはなし』の取材で得た材料を、フィクション作品として活かしたのが『ナナのリテラシー』です。登場人物「鈴木みそ吉」と「山田仁五郎」の会話は、『でんしょのはなし』を読んでいると思わずニヤリとできます。

『でんしょのはなし』単行本にはライナーノートが追加されたり、コルク佐渡島庸平さんに再度インタビューした描き下ろしが収録されたりしているので、『Web Magazine KATANA』の連載を読んでいても十二分に楽しめました。紙版はマイクロマガジン社から、電子版はeBookJapanからの発行。せっかくなので、紙版は保管用、電子版は観賞用で、両方買いました。こういう読者、今後はもっと増えてくるかも?

でんしょのはなし

『でんしょのはなし』を試し読みする

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