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児童虐待について考える漫画7選【ネグレクト、しつけ、毒親】

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近年、社会問題としてニュースでも取り上げられることが多い児童虐待。「指導」や「しつけ」を建前に、人目につかないところで行われたり、そもそも虐待と自覚・認識されていなかったりと、なかなか問題解決が難しいという現状があります。

今回は、保護する立場、虐待される子供、虐待してしまう親、それぞれの視点から児童虐待を描いている漫画を7作品ご紹介します。社会問題としての虐待を知りたい方には現状理解として、虐待の当事者として悩んでいる方には、問題解決の糸口や何らかの救いになれば幸いです。

虐待のサバイバーが子供たちを救う『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』

ちいさいひと 青葉児童相談所物語(1)

完結『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』 全6巻 夾竹桃ジン・水野光博・小宮純一 / 小学館

児童相談所に勤務する、駆け出し児童福祉司・相川健太。彼は他の職員が気づかない子供の異変を敏感に察知します。なぜなら健太も虐待や暴力から生き延びて大人になった当事者・サバイバーだからです。ときおり襲ってくる虐待のフラッシュバックと戦いながら、1人でも多くの子供を助けようと奮闘する姿が描かれています。

本作は、子供の保護から親の監督まで、普段なかなかわからない児童相談所や児童保護の現場を知ることができる作品です。作中で描かれている事例は、現実の事件とも重なるところがあります。例えば、第1巻のエピソード①では、母親が子供の面倒を見ず、2人の幼い子供を部屋に閉じ込めて放置するネグレクトが、第4巻のエピソード④では、ごく普通の家庭内での虐待で、しつけと称して息子に手を上げる父親の姿が描かれており、その内容に既視感を覚える方もいるでしょう。異変に気づいても立ち入り調査の許可が下りないなど、「なぜ児童相談所は間に合わなかったのか?」の理由を垣間見るようなエピソードもあり、綿密な取材に基づいて描かれていることがわかります。
また、健太が大人の怒号に委縮してしまったり、動けなくなってしまったり、虐待を受けた経験が大人になっても影を落としている様子も描かれ、虐待経験者の苦しみも同時に知ることができます。

本作はいったん全6巻で完結していますが、現在、『新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語』として連載され、再び注目を集めています。虐待とその保護現場を知るきっかけとして、おすすめしたい作品です。

『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』を試し読みする

「もしかして毒親?」と悩んだら、まずはこの本『母がしんどい』

母がしんどい

完結『母がしんどい』 全1巻 田房永子 / KADOKAWA / 中経出版

本作は作者である田房永子先生(エイコ)の実体験エッセイで、主に母との関係について描かれています。

エイコの母は一見明るく朗らかですが、自分の思い通りにならないと、激しくエイコを責めます。幼児期からずっと母の理不尽さに振り回され、自分がやりたいことを止めさせられ、やりたくないことを強要される日々。成人したあともそれは変わらず、母が職場に文句の電話をかけてくるなど振り回され続けます。やがて、結婚と妊娠を機に、エイコはその関係が不自然であることに気づき……。

家庭という閉鎖空間では、子供は親の異常さになかなか気づくことができません。エイコの幼児期から成人後までのエピソードは、彼女と同じように親との関係に違和感がある人には、思い当たることが多いのではないでしょうか?虐待というと、肉体的な暴力を想像しがちですが、言葉や態度で子供を追い詰める「心理的な虐待」も存在します。本作では「虐待」という表現は出てこないのですが 、これも一つの「虐待」と言えるでしょう。エイコは母だけではなく、「親を大事にしないと不幸になる」「親が死なないと親のありがたみはわからない」「育ててもらった親を大切にしなければならない」といった父や世間の声にも苦しめられますが、精神科の医師や同じ悩みを持つ人との交流を通して、自分の健康のために毒親と絶縁することを決めます。

親との関係に疑問を持ち始めた方、悩んでいる方に読んでいただきたい本作。田房永子先生による、同じような体験をした読者の体験談をまとめた『それでも親子でいなきゃいけないの?』『うちの母ってヘンですか?』もおすすめです。

『母がしんどい』を試し読みする

虐待をしてしまう親の心理『曽根富美子傑作選 死母性の庭』

曽根富美子傑作選 死母性の庭

完結『曽根富美子傑作選 死母性の庭』 全1巻 曽根富美子 / ぶんか社

社会派の漫画家・曽根冨美子先生が描くのは、虐待をしてしまう母親の心理。表題作「死母性の庭」が虐待を扱った作品です。

多忙な夫と一歳半の息子・厚と暮らす主人公・瞭子(りょうこ)。夫婦円満なものの、瞭子には夫に言えない秘密がありました。それは虐待してしまうこと。飼い犬から始まった虐待は、犬が逃げ出してからは厚に向けられるようになり……。

母性は女性であれば誰にでも備わっているものだと、多くの人がそう信じていますが、中にはすぐに母性が芽生えない女性もいます。瞭子もその一人で、子供に対して愛情よりも戸惑いと恐れを感じていました。思い通りにならない子供、夫婦のささいなすれ違い、出産により辞めざるを得なかった仕事への未練……。瞭子は子育てによって、今までに経験したことのない挫折を繰り返し、真面目な性格が故にそのストレスが虐待という形で息子へと向かってしまったのです。瞭子を認めてはいけませんが、その心情に共感してしまう女性は少なくないのではないでしょうか。

「このままだと私 厚を殺してしまうかもしれない」と瞭子が訴え、厚を診た医者から指摘されたことによってに、夫は初めて虐待の実態を知るのです。夫と協力して子育てをしていくうちに、瞭子は子供を通して「自分の弱さ」に気付いていきます。虐待を起こさせないためには周囲の理解や協力、歩み寄りがいかに大切かがわかる作品です。

『曽根富美子傑作選 死母性の庭』を試し読みする

虐待の実態がフィクションながらリアル『生贄の子~児童福祉司 一貫田逸子~カラーページ増補版』

生贄の子~児童福祉司 一貫田逸子~カラーページ増補版 上巻

『生贄の子~児童福祉司 一貫田逸子~カラーページ増補版』 1~4巻 さかたのり子・穂実あゆこ / カノン・クリエイティブ

一貫田逸子(いっかんだ いつこ)は、小学校の時に同級生を虐待で失った過去を持つ児童福祉司。逸子の働くあおば野市児童相談所には、毎日相談が寄せられます。

先に紹介した『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』と同様に、本作も児童相談所が舞台となっており、児童福祉司の目線から虐待の実態がリアルに描かれているのですが、あまり耳慣れない虐待のケースも紹介されています。

例えば、第2巻の第4話「身代わりにされた子供」 では、母から娘への「代理によるミュンヒハウゼン症候群」という虐待が描かれています。「ミュンヒハウゼン症候群」とは自身がわざと病気になるという精神疾患なのですが、今回のケースは周囲の関心を引き寄せるために、子供に対してケガや病気を捏造するというもので、母親に多く見られるそうです。また、第3巻の第8話「選ばれた子ども」では兄弟間格差のある精神的な虐待が描かれます。これは兄弟の中で、1人は両親に虐待されており、残りの兄弟は虐待されている様子を見せつけられ、時には暴力に加担させられるというものです。いつその拳が自分に向けられるのかという恐怖の中、虐待を見せられている他の子どもたちも精神的に虐待されているのです。

本作は、知らないうちに虐待の当事者として加担してしまう可能性があるということがわかる作品です。虐待といっても様々な形があり、虐待の事例を知りたい人におすすめです。

『生贄の子~児童福祉司 一貫田逸子~カラーページ増補版』を試し読みする

虐待から日常を取り戻した子どもたちのその後までを描く『児童養護施設の子どもたち』

児童養護施設の子どもたち1~哀しみの現実~

完結『児童養護施設の子どもたち』 全2巻 榎本由美 / ぶんか社

本作は児童養護施設を舞台に、虐待から抜け出した子供たちのその後が描かれています。

さまざまな事情から養護施設で暮らす子どもたち。暴力や飢えのない世界とはいえ、日常生活に慣れるためには問題もあります。例えば、保護されてきたばかりの子供は、出された食事を勢いよくガツガツかき込みます。これは、虐待されていた頃、次にいつ食べ物が食べられるかわからないため、食べ物が目の前にある時にあるだけ食べなければいけない、という本能からでした。保護され、安全な生活が送れるようになったとはいえ、子供たちには虐待されていた時に沁みついた悲しい癖があるのです。

虐待された子供たちが暴力にさらされない生活を取り戻した時、何をどう感じるのか。救い出されたら終わりではなく、そこから健全な日常を取り戻すことがいかに困難かがわかる作品です。

『児童養護施設の子どもたち』を試し読みする

毒親から逃げ出した方法が参考になる『ゆがみちゃん 毒家族からの脱出コミックエッセイ』

ゆがみちゃん 毒家族からの脱出コミックエッセイ

完結『ゆがみちゃん 毒家族からの脱出コミックエッセイ』 全1巻 原わた / KADOKAWA / メディアファクトリー

ゆがみちゃんの家族は毒家族。暴力とお金で子どもを支配しようとする父、兄を優遇しゆがみちゃんを軽視する母、宗教を盲信し母と対立をする祖母など。子どもの頃から家庭に違和感を持っていたゆがみちゃんは、そのストレスから過食嘔吐に悩まされ、高校生になると自殺願望も。そんなゆがみちゃんが毒家族を抜け出し自立するまでを描く、作者の実体験を基にしたエッセイです。

「毒親」とは暴言、威圧、自立の阻止・妨害など、心理的虐待を行う親のことを指します。ゆがみちゃんは自分の家がおかしいことに気づき、計画的に家族から逃れるための計画を立てます。就職し、一人暮らしをするなど、具体的にゆがみちゃんが行ったことが細かく描かれており、同じように悩み苦しんでいる人にとっては参考になる部分も多いのではないでしょうか。

作者の原わた先生は、家族からの脱却の過程で、先に紹介した田房永子先生の『母がしんどい』を読み、自分の体験を漫画化することにしたそうです。現在、家族関係に苦しんでいる人は、家族からの脱却について何かヒントを得られるかもしれません。また、毒家族を持つ恋人や友達を理解する手助けにもなる1冊です。

『ゆがみちゃん 毒家族からの脱出コミックエッセイ』を試し読みする

トラウマを乗り越え、母になった実体験エッセイ『母になるのがおそろしい』

母になるのがおそろしい

完結『母になるのがおそろしい』 全1巻 ヤマダカナン / KADOKAWA / メディアファクトリー

カナンは結婚3年目で、夫と子作りの話があがりますが、母になることが怖いと感じていました。その理由は、カナンが育ってきた環境にあり、母のようになりたくないという気持ちが強かったのです。カナンの母は奔放なシングルマザーで、子供と暮らす家に男を連れ込んでは同居、そして義父の中にはカナンに虐待した人もいて……。

ネグレクトや義父からの暴力を受けて育った漫画家で、『私の彼は仕事ができない』『花街アンビバレンツ』などの山田可南先生が、ヤマダカナン名義で自らの体験を描いたエッセイ。母になるために子供時代の体験を整理し、トラウマを乗り越えていく過程を描いています。寂しくて男性依存になった母に対して、カナンは仕事依存でした。出産をした後も自分の中の優先順位は仕事が一番であり、子供は二の次と思っていましたが、やがて子供をかわいいと思うようになります。自分がされて嫌だったこと、自分がしてほしかったことなど、子育てを通して自分の感情を整理し、子育てによって自身を癒やしていきます。自身の家庭環境が原因で母になることに恐れを感じている女性や、そういう女性が身近にいる方にぜひ読んでほしい1冊です。

『母になるのがおそろしい』を試し読みする

最後に

今回紹介した虐待漫画は、人によっては読んでいてつらくなる作品もあるでしょう。ですが、実態を知ることで、何らかのシグナルに気づける可能性が増えるかもしれません。児童虐待について考えるきっかけになれば嬉しいです。

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