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今読みたいおすすめボクシング漫画8選【王道から異色作まで】

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『あしたのジョー』『がんばれ元気』など、名作揃いのボクシング漫画。現在進行形の作品では、2017年2月段階で単行本116巻を刊行している森川ジョージ先生の『はじめの一歩』が、その代表格として挙げられるでしょう。しかし、他にも魅力ある作品はいっぱいあります。

今回は、今読みたいボクシング漫画8作品をピックアップ。主人公の性格や生い立ち、ライバルや指導者との人間ドラマ、試合シーンの描き方などなど、作品ごとの個性を詳しく紹介します!

突き上げた拳は地獄から抜け出すため、闇から光へ向かう物語『リクドウ』

『リクドウ』

『リクドウ』 1〜12巻 松原利光 / 集英社

地獄を知る少年。それが『リクドウ』の主人公・芥生リクです。父親は首吊り自殺し、母親は情夫によって麻薬中毒に。母親を苦しめ、自分にも暴力を振るう情夫を、まだ小学生だったリクは、自分の拳と鈍器を使って殴り殺してしまうのでした。あまりにも凄惨で、行き場のない子供時代。ですが、ボクシングとの出会いが、リクの人生に一つの道を指し示すことになります。

リクに最初に殴り方を教えたのは、元東洋太平洋チャンピオンのヤクザ者・所沢京介。彼に連れて行かれた馬場拳闘ジムで、リクは本格的にボクシングを始めます。そして練習に練習を重ねた歳月が過ぎ、17歳となったリクは見事にプロテストに一発合格。プロボクサーとして新たな人生を歩み始めます。

リクの戦いは、子供時代の悪夢を払拭する戦いでもあります。父のような敗北者にならないため、ボクシングという居場所を失わないため、時に鬼の形相になって対戦相手に向かっていくのです。そんな彼を、エリートボクサーの兵動楓は「…初めて見た…殺すつもりで殴ってるヤツ」と評します。拳を繰り出すリクの瞳に宿る闇と野性を、松原利光先生は迫力あるタッチで描き出します。

しかし、『リクドウ』で描かれるのは、過酷なストーリーばかりではありません。ライバルと戦い、尊敬すべき上位ランカーと出会い、物語が進むごとにリクの苦しみは癒やされていきます。ボクサーとしての闘争心は持ち続けつつ、彼は人間としても成長していくのです。その隣には、子供時代から一緒に育ってきた幼なじみの少女・苗代ユキの姿が。今も続いているリクの戦いに注目です。

『リクドウ』を試し読みする

拳ひとつで死線をくぐり抜ける少年奴隷の戦い『拳闘暗黒伝セスタス』

『拳闘暗黒伝セスタス』 

完結『拳闘暗黒伝セスタス』 全15巻 技来静也 / 白泉社

ローマ帝国の少年・セスタスを主人公にした『拳闘暗黒伝セスタス』は、ボクシング漫画であり歴史漫画でもあるという異色の作品です。舞台となるのは、第五代皇帝ネロが統治する紀元1世紀のローマ。セスタスが拳奴となるところから、物語は始まります。

拳奴とは、古代拳闘の選手として戦う奴隷のこと。普段は主人の館に閉じ込められ、試合の時だけアリーナ(闘技場)に向かうという、自由を束縛された身分です。彼らにとっての拳闘試合は、文字通りの命がけ。鉄の鋲(びょう)が打たれた硬いグローブをはめて戦い、試合はどちらかが倒れるまでの時間無制限。しかも敗者は、観客によって死を宣告されるという、残酷なものでした。セスタスは小柄ながらも、神速と呼ばれるほどのスピードと鋭いパンチで、負けたら死という戦いをくぐり抜けていくのです。

自由市民の享楽のために、見世物として命を賭けさせられる奴隷。

「この双(ふた)つの拳骨だけでオレは生きてゆくんだ!!」

という決意を胸に、過酷な運命に立ち向かうセスタスは、応援したくなる主人公です。戦っている当人や観戦者のモノローグによって一つ一つの動きが分析される拳闘シーンは、説得力あり。また、ローマ時代の風俗や地理、歴史上の人物に対する解説も多く、読んでいると歴史の知識も身につきます。

もちろん、セスタスを巡る人間ドラマも濃厚です。無敗の拳奴だった師・ザファルとの師弟関係や、総合格闘技パンクラティオンの使い手・ルスカとの長きにわたるライバル関係など、読み応え十分。純粋な少年皇帝から稀代の悪帝へと変貌していくネロの物語にも注目です。現在は続編の第2部『拳奴死闘伝セスタス』が連載中で、帝国中から集まった猛者とのトーナメント勝負が開幕しています。

『拳闘暗黒伝セスタス』を試し読みする

アイドル好きのメガネ少年は最強のハードパンチャー!『世界はボクのもの』

『世界はボクのもの』

『世界はボクのもの』 1~4巻 若杉公徳 / 小学館

『デトロイト・メタル・シティ』の若杉公徳先生が描く『世界はボクのもの』。アイドルオタクの大学生が、実は最強のボクサーだったというコメディ展開が冴えるボクシング漫画です。主人公は、4人の仲間とともに、マジかよ少女隊(マジ少)というアイドルグループの追っかけをしている砂原世界。ある時、追っかけ仲間の一人に誘われて、マジ少のメンバーが通っていると噂のコグレジムを訪れた世界は、そこでボクシングの才能の一端を、思わず披露してしまいます。実は世界の実家は、多くのプロボクサーが所属する名門・大砂原ジム。そこで彼は幼い頃から祖母によって、世界王者になるべく鍛えられていたのでした。

アイドルオタクで、優しげなメガネ青年である世界。その外見に反して、一発で相手を倒すハードパンチャーというギャップがこの作品のキモであり、『デトロイト・メタル・シティ』の主人公が、気弱な音楽青年とデスメタル界の帝王という二つの顔を持っていたことにも通じるものがあります。また、マジ少が歌うアイドルソングの歌詞や振り付けもかわいくて、若杉先生ならではの音楽ネタも充実。さらに、世界とコグレジムのマネージャー・駒沢麦とのラブコメもあるという、要素満載の作品なのです。

その一方で、熱血の展開を見せていくのがボクシングシーン。マジ少絡みの理由によって、コグレジムからプロデビューした世界は、初戦で大砂原ジムの若手・伴場先人と戦うことになります。さらにその先には、世界を最大のライバルと勝手に思いこんでいる、アマチュア8階級制覇のホープ・結城未来の存在が……。笑いあり熱戦ありの、一粒で何度も美味しいボクシング漫画です。

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戦いのステージはルール無用の路上『ホーリーランド』

『ホーリーランド』

完結『ホーリーランド』 全18巻 森恒二 / 白泉社

一見気弱そうに見える主人公が、実は強い。『ホーリーランド』も、『世界はボクのもの』と似た設定を持つ作品ですが、こちらは超シリアス。そして、ボクシング漫画の枠に収まりきらない展開を見せていくことになります。

主人公の神代ユウは、街の不良たちから“不良(ヤンキー)狩り”と恐れられる存在。いじめられっ子時代に一人でコツコツと練習してきたボクシングによって、格闘家としての才能が開花したのでした。

最初は絡んできた不良を撃退していただけのユウですが、噂を聞きつけた腕に自信のある格闘技や武道を修得した不良が次々と現れてユウに勝負を挑みます。柔道、空手、レスリング、キックボクシング、剣道などの使い手を相手に、ルール無用のストリートファイト。ユウは戦った相手の技術や経験を血肉とし、自分の技と融合させてさらに力を付けていきます。やがてはセミプロの格闘家から「こういう獣はめったにいねえ!!!」と言われるほどになるのです。この作品の最大の魅力は、ユウとストリートの仲間との友情ドラマ。戦いを通して屈強な男たちと絆を結び、孤独ではなくなっていくユウの姿は感動的です。

作者の森恒二先生は、格闘技の経験者。ユウの戦いぶりや登場する多種多彩な武道に詳細な解説がされており、格闘技のウンチクも楽しめる作品です。

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元世界チャンピオンが原作を担当、ボクシング業界の裏側も描かれる『タナトス』

『タナトス』

完結『タナトス』 全8巻 竹原慎二・落合裕介 / 小学館

元WBA世界ミドル級チャンピオンであり、かつてTVのバラエティで人気を博した「ガチンコ!ファイトクラブ」で不良たちを厳しく指導したことでも知られる竹原慎二先生が原作を担当した、正統派のボクシング漫画、それが『タナトス』です。

主人公は、不良たちのケンカを肩代わりし生活費を稼ぐ少年・藤原陸(リク)。自分の腕に自信を持っていたリクですが、天才アマチュアボクサー・棚夫木克海にケンカをふっかけ、一発も当てることができずに倒されます。それがきっかけで、リクはボクシングの世界に入りこむことになるのです。

不遇な日々に心がすさみ日の当たらない場所で生きてきたリクが、ボクシングやボクシングを通じて出会った仲間によって救われ、強くなっていく一方で、プロデビュー目前で脳に先天性の病気が見つかった棚夫木は生きる道を見失ってしまいます。日に日に強くなっていくリクを見て、棚夫木はボクシングの道を諦めきれず……。光溢れる世界へと向かうリクと、心に闇を宿していく棚夫木。対照的な二人のボクサーの運命にも注目です。

後半では、リクはお世話になった先輩ボクサーたちと新たにボクシングジムを設立する展開も。ジム設立に必要な物や費用、運用していくために必要なことなど、ボクシング界の裏事情も描かれます。原作者が元世界チャンピオンならではの、経験に裏付けされたボクシング漫画なのです。

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人生から逃げてきた男がボクシングで変わる!『RRR(ロックンロールリッキー)

完結『RRR(ロックンロールリッキー)』 全10巻 渡辺潤 / 講談社

「ガチンコ! ファイトクラブ」のような番組に出演したことで、主人公がボクシングの世界に飛び込んでいくのが、『RRR(ロックンロールリッキー)』。この作品の特徴は、主人公・岩巻力太郎の年齢。27歳からボクシングを始めてボクサーになるという、遅咲きの男です。

それまでの力太郎は、バンドでビッグになると言いながら、特に努力もせずに暮らしていました。転機となったのは姉夫婦の突然の死。残された5歳の男の子(青空)を引き取り、自堕落な生活を見つめ直すことに。その時に降ってわいたのが、3ヶ月の練習でボクシングのプロテストに挑むというTV番組への出演依頼だったのです。元世界チャンピオンの大石雷太の指導のもと、力太郎は地道な練習によって力をつけていきます。力太郎の良さは、追い詰められた時の瞬発力。不安や恐怖を感じる場面こそ力を発揮できる才能が彼にはあり、その才能とひたむきな努力によって、力太郎は年齢や経験のハンデをこえていくのです。

力太郎が頑張る理由。それは、自分が初めて一つのことに真剣に打ち込んでいるという実感です。

「何をやっても逃げてきた俺が・・逃げずにいられた!」

そう言ってリングで踏ん張る力太郎は、ボクシングとの出会いによって、初めて大人になれたのかもしれません。

作者は、『代紋<エンブレム>TAKE2』『三億円事件奇譚 モンタージュ』『クダンノゴトシ』の渡辺潤先生。アツいドラマと軽妙なコメディのバランスも絶妙で、全巻一気に読み進めてしまいますよ。

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ヘビー級の少女が、一気に世界の舞台へ『ライスショルダー』

完結『ライスショルダー』 全18巻 なかいま強 / 講談社

今回紹介するボクシング漫画8作品の中で、唯一、女子プロボクシングを扱っているのが『ライスショルダー』。この作品の最大の特徴は、〈世界レベルの戦い〉です。

主人公の秋野おこめは、身長193センチ、体重92キロという規格外の体格を持つ18歳の少女。地元岩手の相撲大会で屈強な男たちを相手に優勝した彼女は、元日本バンタム級チャンピオンの夏木茜に見出され、ボクシングの道へ。一発当てれば相手をKOする恐るべきパワーで、あっという間にプロテストに合格します。ところが、国内にヘビー級の女子選手は皆無。彼女が真の実力を発揮するには、海外選手からの挑戦を受けることが不可欠でした。

ということで、物語は一気に世界規模に。フィリピンでは女囚の選手と刑務所内で戦い、韓国では強烈なアッパーを武器にする国民的スター選手と激しい打ち合いを演じ、舞台はついにボクシングの本場、アメリカへ。どんどんビッグな存在になっていくおこめを海千山千のプロモーター達が放っておくはずがなく、女子ボクシング世界第2位や元世界チャンピオン、現世界チャンピオンと試合をすることになります!

ヘビー級の戦いらしく、一打一打が重量感たっぷりに描かれるのも、この作品の特徴。派手に選手が吹っ飛んでいく見開きが、どの巻にも登場します。その一方、過激な戦いをどれだけ繰り返しても変わらないのが、田舎娘おこめの純朴さ。「まあでも、結局は女子のボクシングなんでしょ?」と軽く思っている方にこそ是非読んでほしい! 数々のスポーツ漫画を描いてきたなかいま強先生ならではの試合描写は、男女問わず圧倒する壮絶さで、一度読み始めれば止まらない熱さあふれる作品です。

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なんでも器用にこなす少年が、汗と努力のボクサーへ『BUYUDEN

完結『BUYUDEN』 全13巻 満田拓也 / 小学館

『MAJOR』で、一人の少年がプロ野球の選手になるまでの人生を描ききった満田拓也先生。その次作にあたる『BUYUDEN』も、主人公の小学生時代から始まり、中学、高校と、ボクシングに賭ける人生を描いていく大河ドラマです。

小学6年生の武勇(たけ いさむ)は、勉強もスポーツもできてイケメンという3拍子揃った少年。同じ学校で自分にかなうヤツはいないと高をくくっていた彼の前に現れたのが、関西から引っ越してきたボクシング少女の要萌花(かなめ もか)でした。萌花の強さとかわいらしさに惹かれた勇は、彼女のトレーニングに付き合うことに。そこから徐々にボクシングの世界にハマりこんでいくことになります。

最初は萌花のレクチャーで練習していた勇ですが、本格的にジムに入会して、経験を積んでいきます。小学生編のハイライトは萌花や勇のキッズボクシング大会出場。しかしそこで、萌花の将来に関わる決定的な出来事が起こってしまうのです。萌花の代わりにチャンピオンになるという決意とともに、小学生時代が終わり、別々の中学に進学。2人は高校で再会し、勇のボクシング人生は、再び萌花というパートナーを得て新たな展開を迎えるのでした。小学生時代のライバル達に加え、新たな強敵も登場し、ドラマはますます盛り上がっていきます。友情と恋とボクシング。満田先生らしく、青春ど真ん中をてらいなく爽やかに描いた作品です。

『BUYUDEN』を試し読みする

最後に

人を殺してしまった『リクドウ』の芥生リクから、なんでも器用にこなせてしまうがゆえに退屈していた『BUYUDEN』の武勇まで、事情はさまざまですが、一般社会の枠からはみ出してしまう主人公が多いのが、ボクシング漫画の特徴ではないでしょうか。戦うことでしか自分の居場所を見つけられないキャラクターたちのドラマには、日々の生活の中でふと感じる寂しさを癒やしてくれる効用があるように思います。一方で、ストイックに拳を交える試合シーンは、やっぱりアツい。世界最古の格闘技と言われるボクシング。その熱狂は、現代人の我々のDNAにも刻まれているのでしょうね。

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