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体育会系女子で何が悪い!『ブルーサーマル』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。今回は、新潮社「月刊コミック@バンチ」連載の漫画『ブルーサーマル -青凪大学体育会航空部-』をレビューします。著者は小沢かなさん。本稿執筆時点で第1部が完結、単行本が5巻まで刊行しています。グライダーで空を飛ぶ部活「体育会航空部」での青春ドラマを描いた作品です。小沢かなさん自身も学生時代、航空部に在籍しグライダーに乗っていたとのこと。「コミックバンチweb」で第3話まで試し読みできます。

ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部― 1巻

完結『ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部―』 全5巻 小沢かな / 新潮社

体育会系女子の「恋がしたい」という願いは儚く潰え……?

本作の主人公は、都留たまき19歳。高校までバリバリの体育会系女子(バレーボール部)だった彼女は、大学ではキラキラ女子になって恋をする! と決意。試しに入ったテニスサークルでも、猫をかぶっていました。ところが練習中、コートの外に現れた白い翼の飛行機に目を奪われ、思わず本気でボールを打ち返してしまうのです。

ボールはフェンスを跳び越え、飛行機を運んでいた空知大介の頭にクリーンヒット。彼は飛行機から手を離してしまい、翼に傷が付いてしまいます。その飛行機は、体育会航空部所有のグライダー。主将の倉持潤は、傷の修理費や輸送費・人件費・代替機の借用費など、合計200万円をたまきに請求します。

そんな大金、もちろん払えるはずがないたまきは、入部して雑用係として働くことを強要されます。「バラ色の青春(仮)を返して」……と嘆いているような暇もないまま、水汲んでこい、弁当取ってこい、これ運べ、そこ片付けろと酷使されるたまき。ところが、倉持と一緒にグライダーへ体験搭乗したたまきは、一面の青空にすっかり心を奪われてしまうのです。

一生懸命やることは素敵なことだッ!

実は私も大学まで体育会系の部活に入っており、高校時代のたまきと同じバレーボール部でした。たまきのように、大学に入ったらなにか違うことをやってみようと思っていたのですが、つい体育会に引き寄せられてしまったのです。親近感。先輩後輩の上下関係とか、全員での声出しとか、読んでいてなんだか懐かしい気分になります。

たまきは高校時代、告白した(そしてあっけなくフラれた)相手に、影で「体育会系の彼女とかありえねー」「恥ずかしいよ」などと言われているのを聞いてしまいます。「一生懸命 やることこそが すべてだと 素敵なんだと 思っていたのに」と苦悶する高校生のたまき。その反動で「普通の大学生活を送りたい」と思うようになるのです。確かに、一生懸命やることを「恥ずかしい」と思う人もいます。一生懸命やってる人を、揶揄する人もいます。でも、だからなんだっていうのでしょう?

私は、一生懸命な人に惹かれます。とても素敵だと思います。それは価値観の違いです。普通じゃなくても、いいじゃないか! と声を大にして言いたい。「お前は変人だ」と昔からよく言われましたが、むしろそれは喜ばしいことだと思うのです。なにかに一生懸命打ち込むこと、それも立派な「バラ色の青春」だッ!

「どうせやるなら一番とったるけん よう見とかんね!!」

(ゴホン)……さて、この作品のタイトルになっているブルーサーマル(blue thermal)とは、熱上昇気流(サーマル)があるのに雲ができずに青空が広がっている様子を指すそうです(北大航空部Wiki用語集参照)。グライダーに体験搭乗したとき、ブルーサーマルの存在に気づいた様子のたまきに、倉持は目をかけるようになります。

入部後、物覚えの悪いたまきは座学指導された空知から「アホ!!」と言われ、

「どうせやるなら一番とったるけん よう見とかんね!!」

と啖呵を切ってしまいます。ああ、たまき。きみには、きみの思う「普通の大学生活」は無理だ。普通じゃなくても、いいじゃないか。熱く燃える魂を、グライダーにぶつけたまえ。そんな、熱い青春物語です。

第2部を心待ちにしてます。

ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部― 1巻

『ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部―』を試し読みする

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